緩和ケア 萬田診療所

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在宅医療への思い  

橋爪 裕

在宅医療への思い
 
 


 
先日、18年間一緒に過ごした愛犬コウが家族みんなの見守るなか、まるで眠るように穏やかに旅立ちました。コウは大切な家族の一員でした。
コウは、今は亡き祖母にとてもなついており、いつも指定席は祖母の足元、寝るときも祖母のそばにいました。だいぶ前になりますが、もともと関節リウマチのあった祖母は圧迫骨折をきっかけに寝たきりになり、在宅介護になりました。そのときもいつもコウはそばに寄り添って、祖母もコウもどことなく嬉しそうでした。しかし、肺炎になり最期は病院で迎えることになりました。病院ではとても良く診ていただき今でも感謝しております。しかし、点滴をしていたこともあってか体中が浮腫んでいました。当時は今ほど在宅医療と言われる時代ではありませんでしたが、もう少し自然な形もあったのではないかと思うときもあります。この思いは在宅医としての今の自分にもしっかりと生きています。
コウもまた最期の1ヶ月は寝たきり状態になりました。一度動物病院で点滴をしてもらいましたが、獣医からは、「老衰だからね、幸せなことですよ。家で好きなものを食べさせ過ごさせてあげて下さいね。」と言われました。家で過ごしていると、だんだん水分しかとらなくなり眠る時間が増えて、最期は自然な形で枯れるように静かに看取ることができました。私は犬も人と同じようだなあと思いました。
そして、いつも一緒に過ごしてきた愛犬を家で看取ったことで、私の子ども達にも大きな変化がありました。子ども達は、動かなくなったコウに、「コウちゃんがんばったね!ありがとう!」となでながら声をかけていました。それから手紙を書き、コウちゃんがさみしくないようにとたくさんの花とおもちゃを添えてあげていました。コウは命の大切さや、今この時間を生きる大切さを教えてくれました。
人生の最終段階~エンドオブライフ~は過去から未来への絆をつくる大事な時間だと思います。生活全体から命を見つめ、患者さんを支えたい。こんな思いで在宅医療に携わっております。

  2019.03.10